バイオエネルギー技術解説

バイオマスがエネルギーになる仕組み:技術の基本原理をやさしく解説

Tags: バイオエネルギー, バイオマス, エネルギー変換, 原理, 化学, 生物学, 入門

はじめに:地域資源を活かすバイオエネルギー

地球温暖化対策やエネルギーの安定供給といった観点から、再生可能エネルギーの導入が多くの自治体で推進されています。その中でも、地域に賦存する多様な有機性資源を活用できるバイオエネルギーは、地域活性化にもつながる可能性を持つことから注目されています。

バイオエネルギー技術には様々な種類がありますが、これらの技術は、木くずや生ごみ、家畜の排泄物といった「バイオマス」を原料として、化学的または生物学的なプロセスを経てエネルギーを取り出しています。

本記事では、これからバイオエネルギーの地域導入を検討される自治体の皆様に向けて、「そもそも、なぜバイオマスからエネルギーを取り出せるのか?」「主要なバイオエネルギー変換技術では、どのような化学・生物学的な現象が起きているのか?」といった基本的な原理について、専門的な知識がなくても理解できるよう、やさしく解説いたします。

バイオマスとは何か?:太陽のエネルギーを蓄えた有機物

バイオマスとは、「再生可能な、生物由来の有機性資源で、化石燃料を除いたもの」と定義されています。樹木や草、農作物、食品廃棄物、家畜排泄物、下水汚泥などがこれにあたります。

植物は、太陽の光エネルギーを利用して、空気中の二酸化炭素と水から有機物を合成します。このプロセスを光合成と呼びます。光合成によって作られた有機物(糖や繊維など)の中に、太陽のエネルギーが化学エネルギーとして蓄えられているのです。動物は植物を食べ、そのエネルギーを取り込みます。つまり、バイオマスは、元をたどれば太陽エネルギーを化学的な形で貯蔵した資源と言えます。

バイオマスの主成分は、炭素、水素、酸素といった元素で構成される複雑な有機化合物です。特に木質系バイオマスなどには、以下の成分が多く含まれています。

これらの成分が、エネルギー変換技術によって分解され、別の物質に作り変えられる過程でエネルギーが取り出されます。

バイオマスがエネルギーになる基本的な考え方

バイオマスを燃焼させると熱が発生します。これは、バイオマスに含まれる炭素や水素が空気中の酸素と結びつき、二酸化炭素や水になる際に、化学結合のエネルギーが熱として放出されるためです。薪ストーブで暖をとるのと同じ原理です。

現代のバイオエネルギー技術は、この「燃焼」だけでなく、様々な化学的・生物学的な方法を用いて、より効率的に、あるいは用途に応じたエネルギー形態(電気、熱、燃料ガス、液体燃料など)に変換しています。

主要なバイオエネルギー変換技術の化学・生物学的な仕組み

地域で活用される主なバイオエネルギー変換技術として、熱化学的変換、生物化学的変換、物理化学的変換があります。それぞれの技術で、バイオマスの有機物がどのようにエネルギーに変わるのか、その基本的な仕組みを見ていきましょう。

1. 熱化学的変換:熱で有機物を分解・再構成する

熱化学的変換は、バイオマスを高温で処理する技術です。代表的なものに燃焼、熱分解、ガス化があります。

2. 生物化学的変換:微生物の働きを利用する

生物化学的変換は、微生物の力を借りてバイオマスの有機物を分解・変換する技術です。主に湿度が高い食品廃棄物や家畜排泄物、汚泥などのバイオマスに適用されます。

3. 物理化学的変換:化学反応を利用する

物理化学的変換の代表例として、廃食用油などからバイオディーゼル燃料(BDF)を製造する技術があります。

地域での技術選定への示唆

ここまで見てきたように、バイオマスの種類(主成分)によって、適したエネルギー変換技術が異なります。

地域のバイオマス資源の種類と量、そしてどのような形態のエネルギーが必要か(電気、熱、ガス燃料、液体燃料)を考慮して、最適な技術を選択することが、効率的かつ持続可能なバイオエネルギー事業の実現に向けた重要なステップとなります。

まとめ:基礎原理の理解が技術選定の第一歩

バイオマスエネルギー変換技術の根底には、バイオマスに蓄えられた太陽エネルギーを、様々な化学的・生物学的な仕組みを使って取り出すという基本的な考え方があります。燃焼による直接的な熱利用から、微生物の力を借りたガス生成、化学反応による液体燃料製造まで、技術ごとにアプローチは異なりますが、その原理を理解することは、地域のバイオマス資源を最大限に活かすための技術選定や、導入効果を検討する上で大変役立ちます。

本記事が、地域のバイオエネルギー導入をご検討される皆様の基礎知識習得の一助となれば幸いです。