バイオエネルギー技術解説

地域におけるバイオエネルギー熱電併給(コジェネレーション)技術:仕組みと導入のメリット

Tags: バイオエネルギー, 熱電併給, コジェネレーション, 地域エネルギー, バイオマス発電

はじめに:なぜバイオエネルギー熱電併給が地域で注目されるのか

近年、地球温暖化対策やエネルギー自給率向上への関心が高まる中で、再生可能エネルギーの導入が全国各地で進められています。特に、地域に賦存するバイオマス資源を活用したバイオエネルギーは、その分散型電源としての特性から、地域の活性化やレジリエンス向上にも貢献しうるとして注目されています。

バイオエネルギーの利用方法としては、発電や熱利用が一般的ですが、これらを同時に行う「熱電併給」、いわゆるコジェネレーションシステムが、エネルギーの総合効率を大幅に高める技術として重要視されています。地域資源であるバイオマスと、エネルギーを無駄なく使う熱電併給技術を組み合わせることは、地域におけるエネルギーシステムを効率化し、自立性を高める上で大きな可能性を秘めています。

この記事では、地方自治体の環境政策担当者の皆様が、地域でのバイオエネルギー導入を検討される際に役立つよう、バイオエネルギーによる熱電併給技術の基本的な仕組み、その主な方式、そして地域における導入のメリットと課題について、入門レベルで分かりやすく解説いたします。

熱電併給(コジェネレーション)の基本的な仕組み

熱電併給(コジェネレーション)とは、一つのエネルギー源から、電力と同時に熱を発生させ、それぞれを有効利用するシステムです。従来のエネルギー供給システムでは、発電所で電力を生産する際に発生する熱の多くは大気中や冷却水に放出され、有効利用されていませんでした。

例えば、火力発電所での発電効率が一般的に40〜50%程度であるのに対し、コジェネレーションシステムでは、発電時に発生する廃熱を温水や蒸気として回収・利用することで、エネルギー源全体の利用効率(総合効率)を70〜80%以上に高めることが可能です。

概念図を作成するなら、エネルギー源から「電力」と「熱」という二つのエネルギーが同時に取り出され、それぞれが工場や地域施設、家庭などで利用される流れが示されるでしょう。この「熱」の利用先があることが、コジェネレーションの要となります。

バイオエネルギーをエネルギー源とする場合も、同様の原理が適用されます。バイオマスの燃焼や、バイオガスの燃焼・発酵といったプロセスで得られるエネルギーを利用して発電を行い、同時に発生する熱を暖房、給湯、乾燥、特定の産業プロセスなどに活用します。

バイオエネルギー熱電併給の主な方式

バイオエネルギーを用いた熱電併給システムには、利用するバイオマスの種類やエネルギー変換技術によっていくつかの方式があります。ここでは、代表的な方式をいくつかご紹介します。

1. 木質バイオマス発電をベースとした熱電併給

間伐材や林地残材、製材工場からの端材などの木質バイオマスを燃料として利用する方式です。 * 仕組み: 木質バイオマスを燃焼させ、発生する熱で水を温めて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電します(蒸気タービン方式)。発電に利用されなかった排熱(蒸気や温水)を回収し、熱として利用します。また、木質バイオマスをガス化して得られたガス(木質ガス)を燃料としてエンジンやタービンで発電し、その排熱を利用するガス化方式もあります。 * 特徴: 燃料となる木質バイマスは地域に広く存在し、持続可能な供給源となり得ます。比較的大規模な施設から、地域規模の施設まで対応可能です。熱利用先としては、木材乾燥施設、農業ハウス、地域の公共施設や住宅への地域熱供給などが考えられます。プロセスは、木質バイオマス → 燃焼/ガス化 → 発電(タービン/エンジン) + 熱回収 → 電力供給 & 熱供給 のような流れで図示できます。

2. バイオガス発電をベースとした熱電併給

家畜排泄物、食品廃棄物、下水汚泥、生ごみ、農業残渣などを微生物の働きで嫌気性発酵させ、メタンガスを主成分とするバイオガスを生成し、これを燃料として利用する方式です。 * 仕組み: 発酵槽で生成されたバイオガスを、ガスエンジンやガスタービンの燃料として燃焼させ、発電します。この際に発生するエンジンの排熱や排ガス熱を回収し、温水として利用します。 * 特徴: 多様な有機性廃棄物を燃料として利用できる点が大きな特徴です。比較的小規模な施設から導入可能であり、農場や食品工場、下水処理場など、燃料が発生する場所でのオンサイト利用に適しています。熱利用先としては、発酵槽の温度維持(自身で熱を消費)、畜舎の暖房、温水供給、農業ハウスの暖房などが考えられます。プロセスは、有機性廃棄物 → 嫌気性発酵 → バイオガス生成 → エンジン/タービンでの発電 + 熱回収 → 電力供給 & 熱供給 のような流れで図示できます。

地域におけるバイオエネルギー熱電併給導入のメリット

バイオエネルギーによる熱電併給を地域で導入することには、様々なメリットが期待できます。

導入における課題と検討事項

一方で、バイオエネルギー熱電併給システムの導入には、検討すべき課題もいくつか存在します。

国内外の導入事例

バイオエネルギーによる熱電併給システムは、国内外で様々な規模、様々なバイオマスを利用して導入されています。

例えば、北海道の酪農地域では、家畜排泄物からバイオガスを生成し、地域の畜産農家や関連施設への熱供給(畜舎暖房、発酵槽加温)と発電を行う事例が見られます。また、森林資源が豊富な地域では、木質チップを燃料とした熱電併給施設が、地域の公共施設への熱供給(温水プール、体育館など)と同時に発電を行い、地域内のエネルギー自給率向上に貢献しています。欧州などでは、食品廃棄物や生ごみを利用したバイオガス熱電併給が、地域のリサイクルシステムと連携して普及している事例も多くあります。

具体的な事例として、〇〇市の下水処理場では、下水汚泥消化ガスを利用したコジェネレーションシステムにより、処理場内の必要電力・熱の一部を賄っている、といった状況が挙げられます。こうした事例を参考に、地域の特性に合ったシステムを検討することが有効です。

関連する政策・支援制度

バイオエネルギーの導入、特に熱利用を伴うシステムに対しては、国の固定価格買取制度(FIT/FIP制度)における熱利用分の加算評価や、再生可能エネルギー設備導入に関連する補助金制度など、様々な支援策が用意されている場合があります。こうした制度を上手に活用することが、事業採算性の向上につながります。最新の情報については、国の関係省庁や地方公共団体のウェブサイトをご確認ください。

まとめ:地域計画におけるバイオエネルギー熱電併給の位置づけ

地域におけるバイオエネルギー熱電併給技術は、単なるエネルギー生産手段としてだけでなく、地域資源の循環、エネルギー自立性の向上、災害対策、そして地域経済の活性化といった多面的な効果が期待できる技術です。導入にあたっては、地域のバイオマス資源の賦存状況、エネルギー需要(特に熱需要)の特性、経済性、そして地域住民の理解など、様々な要素を総合的に評価・検討することが重要です。

この記事が、地方自治体の環境政策担当者の皆様が、地域のエネルギー計画や環境計画を策定する上で、バイオエネルギー熱電併給を有効な選択肢の一つとして検討されるための一助となれば幸いです。地域の可能性を引き出すバイオエネルギーの活用に、ぜひ着目いただければと思います。